新卒の手取り額の平均ってどれくらい?初任給はいくら?
新卒の初任給はいくらになるのか、また実際に自分の懐に入る手取り額はどれくらいなのか、気になる方も多いでしょう。一体なにがどれくらい引かれて、手元にいくら残るのかが分からず、不安になる方もいるかもしれません。この記事では、給与からなにがどれくらい差し引かれるのかについて、初任給と二年目以降の給料を比較しながら具体的な手取り額を解説します。また、初任給について、学歴別、文系・理系別、業種別、地域別の違いについてもご紹介します。
目次
給与と手取りは違う!
新卒で1か月間一生懸命働き、いよいよ給料日で初任給が支給されるという時に、給与の額面金額と、実際の手取り額の差に驚く方は多いものです。大学のキャリアセンターでも、内定をつかみとるまでのプロセスについては詳しく手取り足取り教えてくれるものですが、内定後の初任給についてまでは詳しく教えてもらえないでしょう。
実際に会社が支払う金額と、口座に振り込まれる金額には違いがあります。額面通りの振込額を期待していても、手取りとして振り込まれる金額は数万円ほど少ないのです。初任給を支給されて、額面よりも少ない手取りに驚かないためにも、そのカラクリと計算方法について把握しておきましょう。
給与から差し引かれる税金とは
額面からマイナスされた手取りの金額を見て、一体初任給からなにがこんなに引かれているのか気になる方は多いでしょう。給与から引かれているのは、ほとんどが税金と社会保険料です。具体的には、税金には「所得税」と「住民税」があります。保険料には「雇用保険」「厚生年金」「健康保険」が含まれています。これらの税金と保険料を給与額綿から差し引いて残ったものが「手取り」になります。頼んでもいないのにこれらの税金も保険料も差し引かれてしまうことに不満を感じる方もいるでしょう。
しかし、所得税はすべての日本国民が安心して生活するための社会保障費や、高速道路や鉄道・インフラ設備を保つための公共事業費等に使われます。住民税は自治体が運営している図書館などの施設や公園の建設・維持などに使われており、あなたの暮らしをより便利に、豊かにするために使われています。
社会保険もまた、解雇されたり退職したりしても次の仕事が見つかるまで生活を保障してくれたり、医療費の自己負担を軽減してくれたり、高齢になっても生活を維持できる手伝いをしてくれたりするために使われています。
新卒の新入社員の手取りの平均金額
額面の給与金額から、社会保険料と税金を差し引いたものが手取りの金額になります。
しかし、住民税は前年の収入をもとに計算されるため新卒一年目の給料からは引かれません。また、厚生年金と健康保険に関しては前月分が今月の給料から引かれるという仕組みなので、新卒一年目の4月分の給料からは引かれず翌月の5月に4月分が引かれるということになります。そのため、新卒一年目の4月分の給料に関しては1か月間フルで働いていないため、決められた給料よりは少ないことにはなりますが、社会保険料と雇用保険しか引かれるものはないため、手取りが少ないという感覚は5月以降となるでしょう。
たとえば新卒一年目の給料が22万円だった場合、控除される雇用保険料は、額面給与の0.3%となっていることから、【660円】になります。また、所得税は非課税扱いになる諸手当を除いた金額にかかる税金です。22万円の中に2万円の交通費、残業代(これらが非課税となります)が含まれていたと仮定すると、扶養家族がいない場合は【4,470円】が差し引かれます。
二年目以降の手取り金額
二年目以降は上述してきたように、雇用保険・健康保険・厚生年金といった保険料に加え、所得税と住民税が控除されてしまいます。二年目を想定して、手取り額を計算してみましょう。二年目ともなれば、初任給よりも少し昇給していることを仮定して、額面で25万円支給されているとしましょう。雇用保険料は上述した通り、額面の0.3%ですから、【750円】です。健康保険料は自治体によって異なりますが、ここでは東京都在住と仮定すると、【11,880円】となります。なお、健康保険料は会社が折半して支払ってくれているためこの金額となります。厚生年金料は協会けんぽの場合を想定して(健康保険組合では金額が異なってきます)【23,176円】となります。
税金では、所得税を計算しますが、この時賞与を含めた年収額が必要になります。仮に月給25万円で、賞与が年に2回、2か月分支給されたとすると、年収は4,000,000になります。所得税は年収によって等級がありますが、4,000,000円の場合はこれに20%をかけてさらに540,000が上乗せされて控除されます。その結果、月々【7,100円】の所得税が引かれることになるのです。住民税は年間177,900円ほど引かれますが、月々にすると【14,825円】が差し引かれます。これらを総合すると、二年目の手取り額は以下のように計算することができます。
250,000(額面給与)-(750+11,880+23,176+7,100+14,825)=224,269円(手取り額)
一年目の給料と比較すると、かなり差し引かれている印象を受けるでしょう。二年目以降の手取り額の計算方法が面倒という場合は、月給の8割程度と考えておけばおよその手取り額を把握することができます。
給与、初任給の実態!なぜ給与に差が生じるのか
学歴別の平均初任給の違い
初任給は、実は最終学歴によっても違いがあります。厚生労働省の調べ(2015)によると、男女別に以下のような差が生じています。
・男性(高校卒):163,500円
・男性(高専・短大卒):177,300円
・男性(大学卒):204,500円
・男性(大学院修士課程修了):228,500円・女性(高校卒):156,200円
・女性(高専・短大卒):174,600円
・女性(大学卒):198,800円
・女性(大学院修士課程修了):228,500円(参考:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/15/01.html)
同じ学歴でも、男女差はあるものの、最終学歴まで時間がかかるほど、高収入になる傾向が見られます。大学院修士課程修了となると、男女関係なく初任給の金額が上がるようです。
理系、文系での平均年収の違い
出身学部が理系か文系か、学部時代に学んできた内容や専攻内容に応じて、給与に違いが出てくる業種もあります。しかも、仕事の職種によっては文系が理系を上回ったり、またその反対に理系が文系を上回ったりする場合もあるのです。
例えば、同志社大学社会学部教授の浦坂純子(2014)さんは、文系出身者と理系出身者の年収を比較しており、文系が年収583万円であるのに対し、理系は681万円となっており、かなりの差で理系の方が文系を上回った年収を得ているという論文も出しています。
(参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/bplus/7/4/7_256/_pdf/-char/ja)
一方、エンジニアライフ応援サイトTech総研は、文系・理系が同じ職種に就いた場合の年収差について言及しています。これによると、システム開発職(マイコン・制御系)では理系の年収が約516万円であるのに対し、文系の年収は375万円と、理系出身者の方が高い年収を得ていることがわかります。しかし、文系が理系を上回る職種もあるのです。それが同じシステム開発職(Web・オープン系)です。この職種では、理系が約505万円であるのに対し、文系は約523万円と、差が大きいとはいえませんが理系を上回る年収となっています。
(参考:https://next.rikunabi.com/tech/docs/ct_s03600.jsp?p=000352)
この数字はもちろん初任給にも反映されているものであり、総合的に見れば理系のほうが給料は高いものの、文系でも理系を上回る職種があるということです。
業種別平均初任給の違い
厚生労働省(平成25年賃金構造基本統計調査結果(初任給)の概況:3 産業別にみた初任給)によると、業種別の初任給にも差が生じているのがわかります。ここでも男女総合の大卒に限定してご紹介します。
・建設業:198,000円
・製造業:198,800円
・情報通信業:211,600円
・運輸・郵便業:188,600円
・卸売・小売業:199,100円
・金融・保険業:193,300円
・学術研究・専門技術サービス業:206,900円
・宿泊・飲食サービス業:190,100円
・教育・学習支援業:198,100円
・医療・福祉業:192,700円
(参考:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/chingin/kouzou/13/03.html)
情報通信業にはテレビ局やIT関連企業が含まれ、学術研究・専門技術サービス業には大学教授や研究員、国家資格を持つサービス業が含まれるために、初任給でも高くなっています。
企業別の初任給とは
人気の企業ベスト3の初任給
ここでは就職四季報プラスワンによる男女総合の人気企業ベスト3と、その企業の初任給についてご紹介します。
【学生人気ベスト3】
1位:全日本空輸(ANA):214,500円日本生命保険:205,000円
2位:日本航空(JAL):223,000円
3位: みずほフィナンシャルグループ:205,000円
(参考:https://toyokeizai.net/articles/-/217496?page=3)
航空2強がトップ2にランクインし、衰退傾向にあるといわれる金融からみずほフィナンシャルグループが3位にランクインしています。業績だけではなく、社風や社員の雰囲気などからも選ばれているようです。
初任給が高い企業ベスト3
企業の知名度や、その企業規模に関係なく、初任給が高い企業もあります。ここでは、東洋経済オンラインに基づく初任給が高い企業についてご紹介します。
1位:日本商業開発(500,000円)
2位:KLab(320,000円)
3位:ドウシシャ(302,000円)
1位の日本商業開発は、大阪府に本社を構える“JINUSHIビジネス”を看板に掲げた不動産投資事業等を展開している企業です。2位のKLabは、ソーシャルゲームの開発企業であり、3位のドウシシャはローコストと安心・安全の両立を目指す流通サービス企業となっています。
まとめ
初任給に限って、額面金額から差し引かれる分が少ないため、新卒で初めて給与明細を見た方は、「以外と引かれないな」という感想を持つかもしれません。しかし、翌年からはきちんとすべての保険料・税金が引かれてしまい、最終的に手取りとして残るのは額面金額のおよそ80%程度になるのです。手取りが額面よりも少なくなることを見越して、最初から初任給の高い業種・職種・企業に限定して就活をするという方法もあります。